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メガソーラーと山林所有のいまを考える ― 釧路湿原・函南町の事例から見る最新の電力事業 ―
2025-10-18

メガソーラーと山林所有のいまを考える ― 釧路湿原・函南町の事例から見る最新の電力事業 ―

こんにちは。ロケット不動産のロケット社長、渋谷です。

近年、全国で山林や原野、小川のほとりに**メガソーラー(大規模太陽光発電所)**が建設されるニュースをよく耳にします。
「遊休地の有効活用」「脱炭素社会への貢献」といった前向きな一面がある一方で、環境破壊や法規違反、災害リスクなどの問題も浮上しています。

今日は、北海道・釧路湿原と静岡県函南町の事例を取り上げながら、
山林の所有権や法的リスク、そして“最新の電力事業動向”までを不動産の立場から整理してみたいと思います。


釧路湿原メガソーラー問題 ― 許可なき造成と行政協議へ

北海道釧路市の国立公園周辺で、事業者「日本エコロジー」(大阪市)が進めるメガソーラー建設工事が問題になっています。

同社は敷地約4.3ヘクタールのうち、森林開発面積を0.3ヘクタールとして市に届け出ていましたが、実際には0.86ヘクタール
これは森林法上、知事の許可が必要な規模でした。

許可を得ず造成を進めたため、現在は工事を一時中断し、原状回復か、正式許可申請かを巡って釧路市と協議中とのこと。

また、土壌汚染対策法や盛土規制法に基づく届け出にも遅延があり、行政指導を受けていたことが判明しました。
この釧路市内では、同社が15か所でメガソーラー設置を計画しているとの報道もあります。

自然保護と再エネ推進の両立は、今後の日本における「土地活用の最前線課題」です。


静岡・函南町のメガソーラー中止 ― 元警視が立ち上がった

一方で、住民の力で事業が止まった稀なケースもあります。
静岡県函南町の「東京ドーム13個分」の巨大メガソーラー計画。

中部電力子会社トーエネックとブルーキャピタルマネジメントが進めていたこの事業は、
元大阪府警警視の山口雅之氏(現・全国再エネ問題連絡会代表)が中心となり、
地域住民と連携して反対運動を展開。

開発地は砂防指定地に隣接し、小学校の真上にあたる危険な立地でした。
最終的に事業者側が計画を撤回。
2024年、この“65ヘクタール・10万枚パネル”のプロジェクトは中止となりました。

この出来事は、「地元の声」と「法的リスク」を軽視した再エネ事業の限界を象徴しています。


山林・小川・所有権に潜むリスクとは?

メガソーラー建設の多くは、安価な山林・原野・傾斜地を活用しようとするもの。
しかし、不動産の立場から見ると、そこには以下のようなリスクが潜んでいます????

リスク領域 内容 不動産側のチェックポイント
森林法違反リスク 一定規模以上の開発は知事許可が必要。無許可造成は行政停止・刑事罰対象。 計画面積と実際造成面積の一致確認。
地権・境界の不明確性 山林共有・相続登記未了・地籍不備が多い。 境界確定測量・共有者同意・登記整備。
水利・小川・湿地との関係 河川法・水利権・排水トラブルのリスク。 水流・排水経路・洪水リスクマップ確認。
用途制限・条例 調整区域や自然保護区では設置制限。 都市計画・条例・環境アセス要件確認。
住民トラブル・訴訟 景観・土砂災害・環境悪化で反対運動化。 住民説明会・合意形成プロセスの明確化。
撤去・廃棄リスク パネル寿命(約20〜30年)後の処理費用問題。 撤去積立金制度、廃棄契約条項の明記。

✅ 「土地を持っているから再エネに使える」わけではない。
法制度・地権・環境・住民合意という4つの壁を越えられるかが鍵。


⚡ 最新の電力事業動向 ― 「発電」から「エネルギー運用」へ

2025年現在、電力事業は“発電ビジネス”から“電力運用・最適化ビジネス”へと進化しています。
代表的な潮流をピックアップしておきます????

1️⃣ FIP制度(市場連動型報酬)

固定価格買取(FIT)から、市場価格に連動したプレミアム報酬(FIP)制度が主流に。
発電事業者は「いつ・どれだけ発電するか」を予測し、需給調整に協力することで報酬を得る仕組みです。

→ 不動産としては、立地の出力安定性・気象条件が土地価値を左右します。


2️⃣ 系統用蓄電池(グリッドバッテリー)

再エネの出力変動を吸収するため、発電所や変電所に大規模蓄電池を併設する動きが加速。
→ これにより「太陽光+蓄電」という複合モデルが普及。
→ 土地活用としても、追加用地・地盤強度・排熱構造などの設計が重要に。


3️⃣ ペロブスカイト太陽電池など次世代技術

軽量・高効率・柔軟なペロブスカイト太陽電池が実用段階へ。
同じ面積でも従来の1.3倍以上の発電効率を持つ試作品も登場。
→ 将来的な「パネル更新(リプレース)」を見据えた設計が求められる時代に。


4️⃣ 企業PPA・24/7再エネ契約

GoogleやAmazonのように、企業が再エネ電力を直接契約(PPA)するモデルが拡大。
また、24時間常時再エネ電力を使う「24/7 CFE」も国内導入が始まっています。
→ 土地オーナーも発電+企業需要家をつなぐ役割を担う可能性あり。


5️⃣ 地域条例・規制強化の波

釧路市は「ノーモア・メガソーラー宣言」を発表し、自然と調和しない大規模発電を抑制。
全国でも、自治体が許可制・届出制を導入する流れが進んでいます。
→ 許認可・アセスメント・排水計画の“初期対応力”が成否を分けます。


不動産オーナーにとっての新しい「土地の価値」

これからの時代、土地の価値は**広さよりも「再エネ適応性」**で決まります。

✅ 蓄電池を置ける余白があるか
✅ 送電線接続点が近いか
✅ 住民説明・行政協議が早期にできるか
✅ 環境影響を最小化できる配置設計か

この4つを満たした土地は、将来のエネルギー社会でプレミアム資産になるでしょう。


まとめ:自然と共に、持続可能な「電力 × 不動産」へ

釧路や函南のような事例は、エネルギー開発の功罪を教えてくれます。
環境を破壊せず、地域と共生しながら再エネを進めること。
それこそが、これからの**真の“サステナブル不動産”**だと思います。

ロケット不動産としても、
「土地 × 再エネ × 蓄電 × 地域連携」
という新しい都市型エネルギーモデルを追求していきます。


 

ページ作成日 2025-10-18

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