メガソーラーと山林所有のいまを考える ― 釧路湿原・函南町の事例から見る最新の電力事業 ―|渋谷の仲介+α(プラスアルファ)|ロケット不動産株式会社
メガソーラーと山林所有のいまを考える ― 釧路湿原・函南町の事例から見る最新の電力事業 ―
こんにちは。ロケット不動産のロケット社長、渋谷です。
近年、全国で山林や原野、小川のほとりに**メガソーラー(大規模太陽光発電所)**が建設されるニュースをよく耳にします。
「遊休地の有効活用」「脱炭素社会への貢献」といった前向きな一面がある一方で、環境破壊や法規違反、災害リスクなどの問題も浮上しています。
今日は、北海道・釧路湿原と静岡県函南町の事例を取り上げながら、
山林の所有権や法的リスク、そして“最新の電力事業動向”までを不動産の立場から整理してみたいと思います。
釧路湿原メガソーラー問題 ― 許可なき造成と行政協議へ
北海道釧路市の国立公園周辺で、事業者「日本エコロジー」(大阪市)が進めるメガソーラー建設工事が問題になっています。
同社は敷地約4.3ヘクタールのうち、森林開発面積を0.3ヘクタールとして市に届け出ていましたが、実際には0.86ヘクタール。
これは森林法上、知事の許可が必要な規模でした。
許可を得ず造成を進めたため、現在は工事を一時中断し、原状回復か、正式許可申請かを巡って釧路市と協議中とのこと。
また、土壌汚染対策法や盛土規制法に基づく届け出にも遅延があり、行政指導を受けていたことが判明しました。
この釧路市内では、同社が15か所でメガソーラー設置を計画しているとの報道もあります。
自然保護と再エネ推進の両立は、今後の日本における「土地活用の最前線課題」です。
静岡・函南町のメガソーラー中止 ― 元警視が立ち上がった
一方で、住民の力で事業が止まった稀なケースもあります。
静岡県函南町の「東京ドーム13個分」の巨大メガソーラー計画。
中部電力子会社トーエネックとブルーキャピタルマネジメントが進めていたこの事業は、
元大阪府警警視の山口雅之氏(現・全国再エネ問題連絡会代表)が中心となり、
地域住民と連携して反対運動を展開。
開発地は砂防指定地に隣接し、小学校の真上にあたる危険な立地でした。
最終的に事業者側が計画を撤回。
2024年、この“65ヘクタール・10万枚パネル”のプロジェクトは中止となりました。
この出来事は、「地元の声」と「法的リスク」を軽視した再エネ事業の限界を象徴しています。
山林・小川・所有権に潜むリスクとは?
メガソーラー建設の多くは、安価な山林・原野・傾斜地を活用しようとするもの。
しかし、不動産の立場から見ると、そこには以下のようなリスクが潜んでいます????
リスク領域 | 内容 | 不動産側のチェックポイント |
---|---|---|
森林法違反リスク | 一定規模以上の開発は知事許可が必要。無許可造成は行政停止・刑事罰対象。 | 計画面積と実際造成面積の一致確認。 |
地権・境界の不明確性 | 山林共有・相続登記未了・地籍不備が多い。 | 境界確定測量・共有者同意・登記整備。 |
水利・小川・湿地との関係 | 河川法・水利権・排水トラブルのリスク。 | 水流・排水経路・洪水リスクマップ確認。 |
用途制限・条例 | 調整区域や自然保護区では設置制限。 | 都市計画・条例・環境アセス要件確認。 |
住民トラブル・訴訟 | 景観・土砂災害・環境悪化で反対運動化。 | 住民説明会・合意形成プロセスの明確化。 |
撤去・廃棄リスク | パネル寿命(約20〜30年)後の処理費用問題。 | 撤去積立金制度、廃棄契約条項の明記。 |
✅ 「土地を持っているから再エネに使える」わけではない。
法制度・地権・環境・住民合意という4つの壁を越えられるかが鍵。
⚡ 最新の電力事業動向 ― 「発電」から「エネルギー運用」へ
2025年現在、電力事業は“発電ビジネス”から“電力運用・最適化ビジネス”へと進化しています。
代表的な潮流をピックアップしておきます????
1️⃣ FIP制度(市場連動型報酬)
固定価格買取(FIT)から、市場価格に連動したプレミアム報酬(FIP)制度が主流に。
発電事業者は「いつ・どれだけ発電するか」を予測し、需給調整に協力することで報酬を得る仕組みです。
→ 不動産としては、立地の出力安定性・気象条件が土地価値を左右します。
2️⃣ 系統用蓄電池(グリッドバッテリー)
再エネの出力変動を吸収するため、発電所や変電所に大規模蓄電池を併設する動きが加速。
→ これにより「太陽光+蓄電」という複合モデルが普及。
→ 土地活用としても、追加用地・地盤強度・排熱構造などの設計が重要に。
3️⃣ ペロブスカイト太陽電池など次世代技術
軽量・高効率・柔軟なペロブスカイト太陽電池が実用段階へ。
同じ面積でも従来の1.3倍以上の発電効率を持つ試作品も登場。
→ 将来的な「パネル更新(リプレース)」を見据えた設計が求められる時代に。
4️⃣ 企業PPA・24/7再エネ契約
GoogleやAmazonのように、企業が再エネ電力を直接契約(PPA)するモデルが拡大。
また、24時間常時再エネ電力を使う「24/7 CFE」も国内導入が始まっています。
→ 土地オーナーも発電+企業需要家をつなぐ役割を担う可能性あり。
5️⃣ 地域条例・規制強化の波
釧路市は「ノーモア・メガソーラー宣言」を発表し、自然と調和しない大規模発電を抑制。
全国でも、自治体が許可制・届出制を導入する流れが進んでいます。
→ 許認可・アセスメント・排水計画の“初期対応力”が成否を分けます。
不動産オーナーにとっての新しい「土地の価値」
これからの時代、土地の価値は**広さよりも「再エネ適応性」**で決まります。
✅ 蓄電池を置ける余白があるか
✅ 送電線接続点が近いか
✅ 住民説明・行政協議が早期にできるか
✅ 環境影響を最小化できる配置設計か
この4つを満たした土地は、将来のエネルギー社会でプレミアム資産になるでしょう。
まとめ:自然と共に、持続可能な「電力 × 不動産」へ
釧路や函南のような事例は、エネルギー開発の功罪を教えてくれます。
環境を破壊せず、地域と共生しながら再エネを進めること。
それこそが、これからの**真の“サステナブル不動産”**だと思います。
ロケット不動産としても、
「土地 × 再エネ × 蓄電 × 地域連携」
という新しい都市型エネルギーモデルを追求していきます。
ページ作成日 2025-10-18
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