日本経済新聞が急に取り上げた 「残価設定型住宅ローン」は本当にアリなのか?|渋谷の仲介+α(プラスアルファ)|ロケット不動産株式会社
日本経済新聞が急に取り上げた 「残価設定型住宅ローン」は本当にアリなのか?
こんにちは。
ロケット不動産の渋谷です。
最近、日本経済新聞で
「残価設定型住宅ローン」
という言葉を見かける機会が増えました。
「最近出てきた新しい住宅ローン?」
と思われがちですが、実はこの仕組み、
令和3年(2021年)頃からすでに存在しています。
今回は、不動産の実務に携わる立場から、
-
残価設定型住宅ローンの仕組み
-
JTI(一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)とは何か
-
本当に使う価値があるのか
-
今後、制度はどう広がっていくのか
を冷静に整理します。
残価設定型住宅ローンとは?
残価設定型住宅ローンとは、
将来の売却や住み替えを前提に、あらかじめ「残価」を設定し、
その残価を除いた金額だけを返済する住宅ローンです。
日経新聞では、次のように説明されています。
▼残価設定型住宅ローン
死亡時などの売却を前提に、返済不要な「残価」を設定し、
利息分と残りを月々の支払額とする仕組み。
自動車ローンでは一般的な考え方ですが、
それを住宅に応用した形です。

なぜ今、国と日経が注目しているのか
背景は明確です。
住宅価格の上昇により、
従来の35年ローンでは限界が見えてきたからです。
住宅取得時の借入額は、
2000年度:約2,600万円 → 2023年度:約5,800万円と倍以上。
年収に対する借入比率も上昇し、
50年ローンやペアローンが一般的になりました。
その結果、
-
退職後も住宅ローンが残る
-
老後資金とのバッティング
-
住み替えがしづらい
といった問題が顕在化しています。
国としても、
「最初から出口を想定した住宅取得」
へ舵を切り始めた、というのが実情です。
JTI(一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)とは?
残価設定型住宅ローンの中核となるのが
**JTI(移住・住みかえ支援機構)**です。
JTIは、
-
高齢期の住み替え支援
-
住宅資産の循環促進
-
売却・買取の下支え
を目的とした一般社団法人で、
国土交通省とも連携しています。
「家は一生持つもの」という考え方から、
住み替え・売却を前提にした住宅の持ち方へ。
その転換を制度面から支える存在です。
利用できる住宅はかなり限定される
現時点では、
残価設定型住宅ローンは誰でも使える制度ではありません。
利用できる住宅
-
大手ハウスメーカーの新築戸建
-
認定長期優良住宅
利用できない住宅
-
中古住宅
-
マンション
-
一般的な新築建売住宅
つまり現状では、
大手ハウスメーカーで新築する方向けのローン
と考えておく必要があります。
JTIの指定金融機関
主な指定金融機関は以下の通りです。
-
日本住宅ローン株式会社
-
株式会社三菱UFJ銀行
-
楽天銀行株式会社
※いずれも、JTIと提携する住宅メーカー経由での利用が前提です。
残価設定月と、その後の選択肢
借入から20~25年後に設定されるのが
**「残価設定月」**です。
この時点以降、次の3つの選択肢が生まれます。
① 返済額軽減オプション(新型リバースモーゲージ)
-
返済額を大幅に圧縮
-
最終的には利息のみの支払い
-
亡くなるまで住み続けることが可能
借主と配偶者が亡くなった後、
住宅はJTIが引き取ります。
② 買取オプション
-
残価設定月以降、いつでも行使可能
-
その時点の住宅ローン残高と同額でJTIが買取
-
売却=ローン完済が可能
③ オプションを使わない
-
自己資金で一括返済
-
残価分を再ローン
-
当初の住宅ローンを継続
柔軟性はありますが、
いずれの場合も資金計画は不可欠です。
メリット|月々の負担を抑えやすい
残価設定型住宅ローンのメリットは、
-
毎月の返済額を抑えられる
-
将来の住み替え・売却を前提に設計できる
-
ライフステージの変化に対応しやすい
特に、
子育て期と老後の負担を分けたい世帯には
合理的な考え方と言えます。
デメリット|実務目線での注意点
一方で、次の点には注意が必要です。
-
総支払額は増えやすい
-
JTIへの手数料(55,000円)がかかる
-
利用できる住宅・金融機関が限られる
-
残価設定年数(20~25年)到来時、
立地や市況によっては
JTIの買取オプションを使わず、
一般市場で売却したほうが高く売れるケースも多い
JTIの買取は、
あくまで“最後の下支え”としての選択肢です。
今後の動き|マンション・新築建売にも広がる可能性
現時点では対象が限定されていますが、
今回、日本経済新聞が改めて取り上げたこと、
そして国の住宅政策の流れを見ると、
今後は制度が拡充されていく可能性を感じます。
背景には、
-
都市部の住宅価格高騰
-
若年層の住宅取得難
-
長期ローンの限界
-
住宅の流動化・循環を促したい国の方針
があります。
将来的には、
-
立地評価がしやすい都市部マンション
-
仕様が均一で評価しやすい新築建売戸建
-
管理・維持基準が明確な住宅
などについて、
一定条件付きで残価設定型ローンが適用される流れ
になる可能性は十分考えられます。
まとめ|ローンは「入口」より「出口」で考える
残価設定型住宅ローンは、
-
魔法のように得をするローン
ではなく、 -
将来の売却・住み替えまで含めた出口設計型ローン
です。
重要なのは、
-
何歳まで住むのか
-
その後どう住み替えるのか
-
そのエリアは将来も売れるのか
そこまで含めて考えること。
住宅ローンは流行で選ぶものではありません。
人生設計と不動産市場、両方を見て決めるものです。
ページ作成日 2025-12-12
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