フラット35「1億2,000万円」時代へ ―― サブプライムと住専問題から学ばなければ、同じ結末を迎える|渋谷の仲介+α(プラスアルファ)|ロケット不動産株式会社
フラット35「1億2,000万円」時代へ ―― サブプライムと住専問題から学ばなければ、同じ結末を迎える
こんにちは。
ロケット不動産の渋谷です。
住宅価格の高騰が続くなか、政府が長期固定金利型住宅ローン「フラット35」について、
融資限度額を現行の8,000万円から1.5倍の1億2,000万円へ引き上げる方針を固めたことが明らかになりました。
あわせて、
-
今後 3年程度は金利を本来より低位に抑制
-
日銀の利上げ局面における 返済負担の軽減
を目的とした政策となる見通しで、23日にも正式発表されるとされています。
このニュースを見て、多くの方がこう感じたのではないでしょうか。
「高い家でも固定金利で買いやすくなる」
「都心の新築やタワーマンションも現実的になる」
確かに、表面的には“住宅取得支援”として非常に分かりやすい政策です。
しかし、不動産と金融の歴史を知る立場から見ると、
どうしても思い出してしまう過去の失敗があります。
それが、
-
サブプライムローン問題
-
住専問題です。

なぜ「限度額引き上げ」は慎重に見なければならないのか
住宅ローン政策で最も危険なのは、
「善意の制度」が「過剰な信用供与」に変わる瞬間です。
住宅は生活の基盤である一方、
金額が大きく、返済期間も長く、
一度判断を誤ると人生そのものに長期の影響を与えます。
過去の二つの金融危機は、
「住宅ローン」という極めて身近な商品から始まりました。
① サブプライムローン問題
― “借りられる人”を増やした結果、何が起きたか
2007年から2009年にかけて世界を揺るがせた
サブプライムローン問題。
これは単なる「アメリカの住宅バブル崩壊」ではありません。
本質は、
-
本来は住宅ローンを組むべきでない層にまで融資を広げた
-
返済能力より「担保価値」「将来の価格上昇」を重視した
-
そのローンを証券化し、リスクが見えなくなった
という構造的な問題でした。
当時は、
「住宅価格は下がらない」
「最悪、売ればいい」
という楽観論が広がり、
金融機関も、投資家も、借り手も、
誰もブレーキを踏まなかったのです。
結果、
金利上昇と価格下落が同時に起きた瞬間、
返済不能者が急増し、
住宅ローンは一気に“不良債権”へと変わりました。
② 住専問題
― 日本でも起きた「審査の形骸化」
「サブプライムはアメリカの話」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、日本でも同じ構図の問題は起きています。
それが 住専問題 です。
1970年代に設立された住宅金融専門会社(住専)は、
-
預金が取れない
-
銀行借入や証券発行で資金調達
-
調達コストが高く、貸出金利も高い
という構造上の弱点を抱えていました。
本来であれば、
その分 厳格な融資審査 が必要でした。
ところが、バブル期には、
-
不動産価格の上昇を前提とした融資
-
実需ではなく投資・転売目的への貸し込み
-
「土地があるから大丈夫」という発想
が蔓延します。
結果、バブル崩壊と同時に不良債権は爆発的に増加。
住専全体で 約6兆5,000億円 にも達しました。
最終的には、
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1995年:8社中7社が経営破綻
-
1996年:公的資金6,850億円投入
-
国民負担での後始末
という結末を迎えます。
今回のフラット35は、何が違うのか?
ここで重要なのは、
フラット35そのものが悪いわけではない という点です。
フラット35は、
-
最長35年固定金利
-
金利上昇リスクを回避できる
-
家計の安定性が高い
という、非常に優れた仕組みでもあります。
問題は、
「限度額が上がったとき、審査がどうなるか」 です。
同じ過ちを繰り返さないための最大のポイント
― カギは「取り扱い金融機関の審査」
フラット35は、
住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して提供する制度です。
つまり、
-
制度設計は国
-
実際の入口審査は金融機関
という構造になっています。
ここが緩めば、
過去と同じことが起きます。
注意すべき3つの視点
① 「借りられる上限」で判断しない
限度額が1億2,000万円になっても、
それは “使っていい金額”ではありません。
重要なのは、
-
返済比率
-
将来の金利水準
-
教育費・老後資金
-
収入減少リスク
これらを織り込んだ
現実的な返済可能性です。
② 住宅価格が下がる前提も持つ
過去の失敗はすべて、
「価格は下がらない」
という思い込みから始まっています。
不動産は、
-
上がることもある
-
下がることもある
この前提を、
金融機関も借り手も忘れてはいけません。
③ 「審査が厳しい金融機関」を嫌わない
不動産実務では、よくある話ですが、
-
審査が厳しい
= 危険
ではありません。
むしろ、
-
将来のリスクまで見ている
-
無理な融資をしない
-
長期で顧客を守る
こうした金融機関ほど、結果的に安心です。
制度は中立、未来を決めるのは「運用」
フラット35の限度額引き上げは、
使い方次第で 追い風にも、地雷にもなります。
-
審査が甘くなれば、サブプライム化する
-
借りすぎが常態化すれば、住専問題と同じ道を辿る
歴史は、何度も同じことを教えてくれています。
ロケット不動産のスタンス
私たちは、
-
いくら借りられるか
-
ではなく
-
いくらなら安全に返せるか
-
将来、売ることも含めて成立するか
ここまで含めて住宅ローンを考えます。
フラット35は強力な武器ですが、
審査と判断を誤れば、凶器にもなる。
だからこそ、
制度の話題が出る「今」こそ、
冷静な視点が必要だと考えています。
ページ作成日 2025-12-21
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