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フラット35「1億2,000万円」時代へ ―― サブプライムと住専問題から学ばなければ、同じ結末を迎える
2025-12-21

フラット35「1億2,000万円」時代へ ―― サブプライムと住専問題から学ばなければ、同じ結末を迎える

こんにちは。
ロケット不動産の渋谷です。

住宅価格の高騰が続くなか、政府が長期固定金利型住宅ローン「フラット35」について、
融資限度額を
現行の8,000万円から1.5倍の1億2,000万円へ引き上げる方針
を固めたことが明らかになりました。

あわせて、

  • 今後 3年程度は金利を本来より低位に抑制

  • 日銀の利上げ局面における 返済負担の軽減

を目的とした政策となる見通しで、23日にも正式発表されるとされています。

このニュースを見て、多くの方がこう感じたのではないでしょうか。

「高い家でも固定金利で買いやすくなる」
「都心の新築やタワーマンションも現実的になる」

確かに、表面的には“住宅取得支援”として非常に分かりやすい政策です。
しかし、不動産と金融の歴史を知る立場から見ると、
どうしても思い出してしまう過去の失敗があります。

それが、

  • サブプライムローン問題

  • 住専問題です。


なぜ「限度額引き上げ」は慎重に見なければならないのか

住宅ローン政策で最も危険なのは、
「善意の制度」が「過剰な信用供与」に変わる瞬間です。

住宅は生活の基盤である一方、
金額が大きく、返済期間も長く、
一度判断を誤ると人生そのものに長期の影響を与えます。

過去の二つの金融危機は、
「住宅ローン」という極めて身近な商品から始まりました。


① サブプライムローン問題

― “借りられる人”を増やした結果、何が起きたか

2007年から2009年にかけて世界を揺るがせた
サブプライムローン問題

これは単なる「アメリカの住宅バブル崩壊」ではありません。

本質は、

  • 本来は住宅ローンを組むべきでない層にまで融資を広げた

  • 返済能力より「担保価値」「将来の価格上昇」を重視した

  • そのローンを証券化し、リスクが見えなくなった

という構造的な問題でした。

当時は、

「住宅価格は下がらない」
「最悪、売ればいい」

という楽観論が広がり、
金融機関も、投資家も、借り手も、
誰もブレーキを踏まなかったのです。

結果、
金利上昇と価格下落が同時に起きた瞬間、
返済不能者が急増し、
住宅ローンは一気に“不良債権”へと変わりました。


② 住専問題

― 日本でも起きた「審査の形骸化」

「サブプライムはアメリカの話」
そう思う方もいるかもしれません。

しかし、日本でも同じ構図の問題は起きています。
それが 住専問題 です。

1970年代に設立された住宅金融専門会社(住専)は、

  • 預金が取れない

  • 銀行借入や証券発行で資金調達

  • 調達コストが高く、貸出金利も高い

という構造上の弱点を抱えていました。

本来であれば、
その分 厳格な融資審査 が必要でした。

ところが、バブル期には、

  • 不動産価格の上昇を前提とした融資

  • 実需ではなく投資・転売目的への貸し込み

  • 「土地があるから大丈夫」という発想

が蔓延します。

結果、バブル崩壊と同時に不良債権は爆発的に増加。
住専全体で 約6兆5,000億円 にも達しました。

最終的には、

  • 1995年:8社中7社が経営破綻

  • 1996年:公的資金6,850億円投入

  • 国民負担での後始末

という結末を迎えます。


今回のフラット35は、何が違うのか?

ここで重要なのは、
フラット35そのものが悪いわけではない という点です。

フラット35は、

  • 最長35年固定金利

  • 金利上昇リスクを回避できる

  • 家計の安定性が高い

という、非常に優れた仕組みでもあります。

問題は、
「限度額が上がったとき、審査がどうなるか」 です。


同じ過ちを繰り返さないための最大のポイント

― カギは「取り扱い金融機関の審査」

フラット35は、
住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して提供する制度です。

つまり、

  • 制度設計は国

  • 実際の入口審査は金融機関

という構造になっています。

ここが緩めば、
過去と同じことが起きます。


注意すべき3つの視点

① 「借りられる上限」で判断しない

限度額が1億2,000万円になっても、
それは “使っていい金額”ではありません

重要なのは、

  • 返済比率

  • 将来の金利水準

  • 教育費・老後資金

  • 収入減少リスク

これらを織り込んだ
現実的な返済可能性です。


② 住宅価格が下がる前提も持つ

過去の失敗はすべて、

「価格は下がらない」

という思い込みから始まっています。

不動産は、

  • 上がることもある

  • 下がることもある

この前提を、
金融機関も借り手も忘れてはいけません。


③ 「審査が厳しい金融機関」を嫌わない

不動産実務では、よくある話ですが、

  • 審査が厳しい
    = 危険
    ではありません。

むしろ、

  • 将来のリスクまで見ている

  • 無理な融資をしない

  • 長期で顧客を守る

こうした金融機関ほど、結果的に安心です。


制度は中立、未来を決めるのは「運用」

フラット35の限度額引き上げは、
使い方次第で 追い風にも、地雷にもなります

  • 審査が甘くなれば、サブプライム化する

  • 借りすぎが常態化すれば、住専問題と同じ道を辿る

歴史は、何度も同じことを教えてくれています。


ロケット不動産のスタンス

私たちは、

  • いくら借りられるか

  • ではなく

  • いくらなら安全に返せるか

  • 将来、売ることも含めて成立するか

ここまで含めて住宅ローンを考えます。

フラット35は強力な武器ですが、
審査と判断を誤れば、凶器にもなる

だからこそ、
制度の話題が出る「今」こそ、
冷静な視点が必要だと考えています。

ページ作成日 2025-12-21

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